響け!ユーフォニアム2 最終回「はるさきエピローグ」シナリオ抜き書き

響け!ユーフォニアム2 最終回「はるさきエピローグ」


脚本 花田十輝 絵コンテ・演出 石原立也山田尚子・河浪栄作


◯(プロローグ)


麗奈「先生っ、好きです!!」

優子「来年、金賞獲るよ」

滝「よくここまで続けてきたね。美しい音色だったよ」

久美子「お姉ちゃん、大好き!!」


◯OP


◯廊下


棚の進学パンフレット。職員室前の情景。


久美子「(ナレ)3年生が引退して……」


◯教室(3-3)


3-3のプレート。2年生部員たちが集まった教室。優子が黒板に文字を書き込む。優子の司会で新3年生会議が始まる。


久美子「(ナレ)新たな役員の選出が始まった」


優子「部長に指名されました吉川優子です。反対意見、有りますでしょうか?」

希美「いいんじゃない?」

滝野「賛成」

梨子「(戸惑いの表情)ぇ……」

優子「ありがとうございます。では、信任されたものと見なします。続いて副部長の選出です」

部員たち「(ざわめき)」


すっくと立ち上がる足元。夏紀が口を開く。


夏紀「副部長に指名された、中川夏紀です」

優子「え?」

夏紀「反対意見、有りますでしょうか?」

優子「ちょ、ちょっと待ってよ。あんたが副部長!?聞いてないんだけど!」

夏紀「言ってないし……」

優子「本気なの!?先輩たちナニ考えてるのよぉ?」

夏紀「知らないよ。わたしだって、あんたが部長って聞いたときは、ハアッ!?てなったし」

優子「どういう意味よ?」


言い合いをする2人に、卓也が頭を抱える。


卓也「やっぱりこうなったか……」

梨子「あすか先輩たっての希望だし」

卓也「あの人、完全に面白がってるなぁ」


夏紀が優子の横に立ち、部員たちに挨拶をする。


夏紀「そういう訳で、まったく気は進まないけど先輩の頼みなんで(優子を指差し)こいつをサポートしていきたいと思います。(ペコリと頭を下げて)よろしく」

優子「人のこと、指差さないで欲しいんですけど」

夏紀「失礼しました、部長(スカートをつまみ上げ、うやうやしく頭を下げる)」

優子「くはあぁぁ。もう、馬鹿にしてえぇぇ!」


◯校舎裏


鰯雲の浮かぶ空。いつもの練習場所に座る久美子が空を見上げている。


久美子「(ナレ)こうして、北宇治高校吹奏楽部が新たなスタートを切るなか、わたしは……モヤモヤしていた」


◯タイトル 最終回「はるさきエピローグ」


◯音楽室


優子が部員たちの前に立ち、基礎練習の指揮をしている。

 

◯校舎外観

 

校内に響く基礎練習の音。


◯廊下


階下の廊下を歩く滝が、その音に気づいて立ち止まる。


◯音楽室


優子が3年生が抜けた部員たちの音を聴いて、焦りの表情を見せる。


優子「(やっぱり……薄い。来年は、頑張って新入生勧誘しなくちゃ……)」


◯廊下


窓際に立つ滝に、美知恵が声をかける。


滝「……(音楽室を見上げる)」

美知恵「これは……」

滝「ええ。学校で指導するという事は、こういう事なんですね……」

美知恵「1年かけて積み上げてきても、またすぐ戻ってしまう。だからいいと、わたしは思っていますが?」

滝「ぁ……」

美知恵「毎年毎年、最初から始められる。それは素晴らしいこと事だと思いますよ」

滝「……ふっ。かもしれません」


◯コンビニ前


日の落ちたコンビニ。ガチャガチャの前の緑と葉月。緑がガチャガチャを回して落胆する。


緑輝「うぅ、またサックスくん……。もう一回!」

葉月「また始めたんだ」

緑輝「コンクールの間は我慢していましたから」


少しはなれた場所で、麗奈の横に立つ久美子が元気なくつぶやく。


久美子「3年生、引退したんだよねぇ」

麗奈「寂しい?」

久美子「ん……、寂しい……のかなぁ」

麗奈「久美子、そういうの無いのかと思ってた」

久美子「え、なんで?」

麗奈「なんとなく」

久美子「ん……(息を漏らして、駆け出す)」


駐車場まで離れて、くるりと振り返って言う。


久美子「なんか、本当にこれで終わりでいいのかなぁって。心残りっていうか……」

麗奈「金賞獲れなかったのが?」

久美子「……なのかなぁ(微かに笑う)」

緑輝「久美子ちゃん」


緑が久美子に近付き、嬉しそうに指差す。その先には歩道を歩く秀一の姿。


久美子「ぁ、秀一……」

葉月「ねっ、行ったら?」

久美子「はっ、なんで?」

葉月「だって」

緑輝「ねぇ」

久美子「なに、なにかあった?」

葉月「久美子、塚本から」

緑輝「なにかもらったんじゃないんですか?」

久美子「えっ?」


宇治橋


歩く塚本を久美子が呼び止める。


久美子「秀一!」

秀一「おぉ」

久美子「あのさ、言いふらしてないよねぇ?」

秀一「なにを?」

久美子「ヘアピン、くれたでしょ、大会前の日に。そのこと」

秀一「は?言うわけないじゃん」

久美子「っ……、じゃあ、いいけど……」


歩き出す久美子に付いて、秀一が歩きながら話す。


秀一「来年さぁ、もっかいちゃんと全国行って、金獲りたいよな」

久美子「ぁぁ、うん。新しい部員も入ってくるしね」

秀一「全国行ったし、来年はそこそこ増えるだろうなぁ」

久美子「うーん。ちゃんと指導できるかなぁ」

あすか「おおーっ!?」

久美子「ん?」

秀一「ぉ?」


大きな声に振り向く久美子たち。葵と歩くあすかが2人を冷やかす。


あすか「青春だねぇ、お2人さん!」

久美子「あすか先輩……」

 

(時間経過)橋の途中のスペースで話す久美子、あすかと葵の3人。


あすか「ホントにぃ?偽証罪は厳罰だよぉ。どう思う?」

葵「秀一くんは小さい頃からそういう気配有ったかなぁ。久美子ちゃんは分からないけど」

久美子「無いよ!」

あすか「いいじゃん、そんな否定しなくて。恋に部活に、それが青春だぁ!」

久美子「本気で言ってます?」

あすか「もっちろん!」

久美子「相変わらず適当だなぁ。……はぁ」

あすか「あら。ちゃんと愛してるよ、黄前ちゃんの事」

久美子「なんですか、それ」

あすか「ふーん、まあいっか。じゃあ行くね」

久美子「え?」

あすか「なに?」

久美子「もう行っちゃうんですか?」

あすか「うん、用事あるからね。ぁぁ、もしかしてなんか有った?」

久美子「あ、いえ……。せっかく久しぶりなのにって」

あすか「久しぶり?でもないでしょ。まだ引退して1ヶ月も経ってないよ?じゃあねー」

久美子「ぁ……」

葵「あすかとなんか有った?」

久美子「え?」

葵「あすかとなんか」

久美子「ううん……、なにも無い……」


立ち去るあすかの背中。久美子がそれを見つめる。


◯玄関


ドアが閉まる、久美子の声。


久美子「ただいまぁ……」


◯久美子の部屋


机の上に置かれた麻美子からの封筒。カバンを置いた久美子がそれに気付く。


久美子「ん?お姉ちゃん?」


(インサート)名古屋国際会議場前、振り向く麻美子の回想。


(インサート)宇治橋、立ち去るあすかの回想。


思い返す久美子の目が潤む。


◯校舎・外観


夕方の情景。雲を引いて飛ぶ飛行機。


◯音楽室


5時前を指す時計。1人残った久美子。あすかが吹いていた曲を思い出しながら吹いている。


(インサート)アクトパル宇治、早朝の桜の広場でユーフォを吹くあすか。

 

ユーフォを吹く久美子の目元。


(インサート)水道橋の下で久美子に笑いかけるあすか。


思い返す久美子が、瞳に涙を浮かべる。


みぞれ「黄前さん?」


ふと気付くと、久美子の前にみぞれと希美が立っている。


久美子「うぇ……、はいっ」

みぞれ「あすか先輩かと思った……」 

久美子「あすか……先輩?」

希美「そっくりだった、音……」

久美子「ぁ……(息が漏れる)」


◯CM(ユーフォを持つあすか)


◯喜撰橋前


ポストに封筒を投函する久美子。


久美子「(ナレ)拝啓、お姉ちゃん。なんかこうして手紙でやりとりをするのは、やっぱりちょっと照れます……」


宇治橋


冬の宇治橋周辺の情景。


久美子「(ナレ)2月になってますます寒くなるなか……」


宇治市・戦川橋

 

戦川と新田川の合流点近くを走る京阪電車の情景。


久美子「(ナレ)わたしの方は相変わらずです……」


京阪電車・車内


麗奈の横に座り、楽しげな久美子。


久美子「(ナレ)勉強もそこそこに毎日練習しています……」


京阪電車六地蔵駅・ホーム


降りてくる乗客たち。


久美子「(ナレ)お母さんは将来の事を……」


◯北宇治高校・エントランス前


登校する生徒たちの情景。


久美子「(ナレ)今から心配してるみたいだけれど……」


◯音楽室


黒板に書かれた「おめでとうございます 卒部会」の文字を見る久美子の背中。


久美子「(ナレ)やっぱりまた全国に行きたい。金賞獲りたい。後悔したくない。お姉ちゃんが言っていた様に」


久美子が手を握りしめる。


(時間経過)葉月の司会で卒部会が始まる。


葉月「それでは、卒業生の入場でぇっす!!」

部員たち「(歓声)」 


扉から入ってくる鳥塚、沢田ら3年生。下級生たちが拍手を贈る。並ぶ3年生の中で香織があすかに話しかける。 


香織「すごく久しぶりに感じるね」

あすか「何週間か来なかっただけなのにね」


号泣する優子に呆れる夏紀。


優子「香織せんぱぁい……」

夏紀「早っ」


久美子はあすかを見つめている。


(時間経過)余興が続く。

下級生男子の女裝寸劇に笑うあすかたち。

優子が晴香に記念品を贈呈。

合宿のビデオ上映。大あくびする姿を映し出されて、優子が香織の目を覆う。夕食時の大野と堺の姿。

あすかと卓也、梨子が魔女のコスプレで手品を披露。ポッキーをかじって見ている久美子。


(時間経過)田邊のカウントから3年生たちによる『Starting the project』の演奏が始まる。


晴香、あすか、香織、喜多村、岡本、宮、野口、田浦、姫神鈴鹿、萩原、臼井、越川、三原、渡辺、鳥塚、笠野、田邊、雑賀、大口、田中、橋、岡、沢田、加橋、加山の熱演が終わる。下級生たちの拍手と歓声。


下級生「(歓声)」


(時間経過)優子が挨拶をする。笑顔で聞く香織たち3年生。


優子「先輩たちと過ごした時間は、その全てがわたしたちにとってかけがえのないものです。それを後輩たちにも伝え、北宇治吹奏楽部を作って行きたいと思います。そして全国、金を必ふっ(噛む)」

あすか「ぶっ」

香織「ふっ」

夏紀「大事なとこで……」

優子「(赤面して)うるさいっ!えっと。……では、わたしたちの決意を込めて卒業生の皆さんにこの曲を贈ります」


希美が一礼して振り返り、指揮棒を構える。笑顔で見守るあすかたち。


2年生、1年生たちによる『三日月の舞』の演奏。

卒業生と共に聴く滝と美知恵。美知恵の目にはうっすらと涙が浮かぶ。

麗奈のトランペットソロ。笑顔で見つめる香織の指が知らずに動く。


(インサート)オーディション騒動。滝に詰め寄る優子。麗奈と優子の衝突。


(インサート)再オーディションの様子。


穏やかな表情で演奏を聴く3年生たち。久美子がユーフォを吹きながらあすかを見やる。


(インサートが続く)

サンライズフェスティバルの情景。あすかのドラムメジャー、髪をかきあげる麗奈、パレードの様子、滝が部員たちを鼓舞する様子。

パレードの練習。

梨子と葉月の特訓。

パレード練習前のあすか。

パレード終了後の久美子。

滝の不敵な笑みに戸惑う部員たち。

グラウンドでの走り込み。

不満げな田浦たちの様子。

良くなった合奏を聴いた葉月の表情。

マッピを投げる構えの加橋。

今年の目標を決める部員たちの様子。

壁に掲げられた京都府大会突破後の写真。

など。


部員たちの熱演が終わる。


3年生「(拍手)」

晴香「(大泣きで)ありがとぉぉぉ……」


(時間経過)夕方の音楽室。卒部会の後片付けをする下級生たち。久美子が周りを見回して、緑に尋ねる。


久美子「ねぇねぇ、あすか先輩ってもう帰っちゃったかなぁ?」

緑輝「さぁ……」

梨子「楽器室行くって言ってたけどねぇ」


◯通学路


ユーフォのケースを運ぶあすかの足元。


◯楽器室


ドアを開ける足元。久美子が入ってきて、あすかの場所だけ空になった棚を見つめる。


◯北宇治高校・正門前


上空から雪が降る情景。「京都府立北宇治高等学校 卒業証書授与式」の看板。


◯教室(1-3)


窓際の久美子。カバンの中からあすかに貰った飴玉を出して見つめる。


◯講堂


卒業式の情景。久美子たち吹奏楽部員が後方に控えている。


男子「答辞。卒業生代表、田中あすか

あすか「はいっ」


壇上に上がるあすかの姿を、久美子が目で追う。 


あすか「答辞。日差しの中に春の暖かさと光を感じるようになってまいりました……」


久美子が目を伏せる。


◯中庭


雪の降る中庭。卒業生と在校生の別れの情景。

三原が滝に礼を言う。


三原「先生、ありがとうございました」


ホルン隊(岸部、森本、瞳)が目に涙を浮かべて挨拶。


ホルン隊「(敬礼して)先輩、お元気で!!」

沢田「(敬礼して)君たちもな!」


美知恵が田邊に言葉を贈る。


美知恵「大学生らしくな」

田邊「はいっ」


走る久美子の足元。


野口がパート員の前で田浦にボタンを渡す。


野口「ん……(渡す)」

田浦「んっ(受け取る)」


加瀬を前に高久が泣く。


高久「先輩いなくなったら、わたしどうすれば……」 

加瀬「(肩に手を置いて)なにをお言いで……」


久美子が中庭にかけ込み周りを見渡す。


晴香がサックスパートの下級生たちに声をかけている。


晴香「定演とか、観にくるからね」


トランペットパート。香織が、彼女のスカーフを受け取った優子を抱きしめて慰めている。


香織「部長でしょ?しっかりしなきゃ……。(走る久美子に)ぁ、黄前さん」

久美子「あすか先輩見ませんでした?」

香織「さぁ、どこだろ?」

久美子「っ(頭を下げて走り去る)」

久美子「はっ、はっ……」

 

◯スロープ

 

卒業生たちの歩く坂道。久美子が駆ける。

 

久美子「はっ、はっ……」


◯渡り廊下・焼却炉前


立ち止まる久美子。


久美子「はぁっ、はぁっ……」


◯音楽室


無人の音楽室。


◯廊下


走る久美子。


久美子「はぁっ、はぁっ……」


◯倉庫前


扉の閉まった倉庫。


◯階段


駆け下りる久美子。


久美子「はっ、はっ……」


◯スロープ


回り込む様に走る久美子。


久美子「っはぁ…はぁっ……」


◯大階段前


走って来る久美子が立ち止まり、無人の大階段を見やる。


久美子「はぁっ、はぁっ……はぁっ……はぁっ、はぁっ…………」


久美子の脳裏に4月の出来事がよみがえる。


(インサート)春先の情景。新歓イベントのあすか。


あすか「新入生の皆さん、北宇治高校へようこそ!」


雪景色の大階段を見つめる久美子。


(インサート)春先の情景。新歓イベントのあすか。


あすか「輝かしい皆さんの入学を祝して」


雪が降る中、久美子が階段を登る。


◯エントランス前


階段を登りきった久美子に、あすかが声をかけてくる。


あすか「あっれー、黄前ちゃん。こんなとこでなにやってんの?」

久美子「……ぐすっ(泣きそうに顔を歪める)先輩こそなにやってんですか?」

あすか「なんか苦手だからさ、こういうの」

久美子「(思い出したように)ぁ、卒業おめでとうございます」

あすか「だーかーらぁ、苦手だって言ってるでしょ?それより、なんかあったの?」

久美子「あすか先輩に、言っておきたいことがあって……」

あすか「わたし?わたしのこと探してたの?」

久美子「はい」

あすか「なになに?もしかして恋の相談?」

久美子「そうです」 

あすか「まじかよ」

久美子「……わたし、先輩のこと苦手でした。先輩だし、同じパートだから思わないようにしてましたけど……、なんか難しいひとだなぁってずっと思っていました。もしかしたら嫌いだったのかも知れません」

あすか「ふっ、ぅっははは……。それが言いたかったこと?うふふふ……ふふっ」

久美子「おかしいですか?」

あすか「そりゃあねぇ。だって、そんなこと分かってたし」

久美子「分かってないです」

あすか「……」

久美子「だって今は、大好きですから」

あすか「……」


目に涙を浮かべる久美子。向かい合う2人。久美子が続ける。


久美子「あすか先輩、絶対本心見せてくれなくて、いつも上から見下されてる様で。友だちのことどうでもいいとか言うし……。でも、でも今はさびしいです。先輩の吹くユーフォ、もっと聴いていたいです。(泣きながら)わたし、あすか先輩みたいなユーフォが吹きたい!」

あすか「それが言いたかったこと?」

久美子「っ、っ(とうなずく)」


あすかがかばんに手をやりながら、久美子に歩み寄り寄る。


あすか「(ノートを差し出し)これあげる……」

久美子「(ノートを受け取って)これ、お父さんの……」

あすか「(笑って)わたしには、もう必要ないからさ」

久美子「っ……(首を横に振る)」


あすかが久美子の頭を撫でて、髪をワシャワシャいじりながら言う。


あすか「今度は黄前ちゃんが後輩に聴かせてあげてよ、その曲」

久美子「っ、ぐすっ。さよならって言いたくないです……」

あすか「ふっ……(微かに笑って)、じゃあ言わない」


涙目の久美子を残して、あすかが大階段を降りていく。あすかとの思い出が久美子の脳裏をよぎる。


(インサート)あすかとの思い出。部活見学での出来事。オーディション前のあすか。京都府大会、演奏前のあすか。水道橋の下のあすか。

 

久美子「っ……」


久美子が降りていくあすかを振り返る。階段を降りきったあすかが久美子を振り返り言う。


あすか「またね!」

久美子「……はいっ!」


立ち去るあすか。久美子が涙を拭う。


久美子「っす、ぐすっ……はぁ……」


◯学校内


校舎越し宇治市街。銅像に降る雪。


◯エントランス前


空を見上げていた久美子が、あすかの足跡が残る無人の通路を見下ろす。


久美子「はぁっ……」


潤んだ瞳で手に持つノートを見る久美子。ノートをめくりハッとする。


久美子「(ナレ)いつだったか、あすか先輩が聴かせてくれた曲。そのタイトルをわたしはそのとき初めて知った……」

 

楽譜が書き込まれたノート。

 

久美子「はっ……」


響け!ユーフォニアム」の文字。


久美子「……ふっ(微笑む)」

麗奈「久美子ぉ!」

久美子「(はっとする)」


久美子が声をかけられて振り向く。エントランス近くに麗奈が立っている。


麗奈「やっと見つけた。昼から合奏練習!」

久美子「ごめん、いま行く」


駆け出す久美子。空を見上げて駆ける久美子のスローモーション。校舎に近づく2人。


久美子「(ナレ)響け!ユーフォニアム。その音の暖かさを、わたしはいつまでも忘れない……」


OL「響け!ユーフォニアム」の文字。



◯ED